事業再構築補助金の公募要領と経済産業省

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補助金というのはすべからく、その時の政権の方針を反映します。つまり、政府が実現したい状況を実現させるために、ある分野などに対してお金を重点的にまわして、その実現までのスピードを加速させるわけです。

とすると、補助金を申請して採択されるようにしたいならば、極論するならば、その時の政権がやりたいことにマッチしていればいいわけです。だから、総理大臣の所信表明演説に立ち返りましょう、というわけではありません。実際にそんなことをしていては、公募期間内に申請書を仕上げることができなくなってしまうでしょう。

実際には、それぞれの補助金の公募要領に審査項目や加点項目が一覧できるようになっています。

事業再構築補助金においても、公募要領の最後のほうに「審査項目・加点項目」が明示されいます。

(1)補助対象事業としての適格性

「4.補助対象事業の要件」を満たすか。補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%((【グローバル V 字回復枠】については 5.0%))以上の増加等を達成する取 組みであるか。

これはわかりやすいです。そもそも、今回の補助金の対象事業としての要件を満たしてるのでしょうか?というポイントと、補助事業が終わった後の計画はきちんと数値的に問題ない水準でしょうか?ということです。

つまり、事業再構築補助金の前提条件を満たしているのかどうかをみられるわけです。ここは当たり前ですね。

(2)事業化点

ここからがきちんと考えるべき本番です。

1 本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な 資金の調達が見込めるか。

あらたに作った事業再構築の計画をきちんと実行できるんですか?ということが問われています。そのための、人材はいますか?、きちんと会社に処理できるキャパシティはあるんでしょうか?、そして、実行するためにはお金がかかるはずですが、それのための資金繰りはできていますか?というポイントです。最後のところの資金面では、もう一歩踏み込んで、金融機関ときちんと話し合いはできていますか、というところも聞かれています。

2 事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。

まず、競合他社の動向やマーケットの動向を事前に調査して分析できていますか?ということが問われています。その調査と分析の結果を、申請書上・計画書上で表現しておく必要があります。そのためには、経営分析で活用される分析フレームワークを活用すると整理しやすいでしょう。たとえば、SWOT分析を適宜いれていくなどが考えられます。

マーケットや市場規模についても、できるかぎり外部の信用おける機関が調査したデータを明示しながら、計画書を作る必要があります。ファクトデータを明示して、そこから導き出せる推論を展開することになります。

3 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。補助事業の課題が明確になっており、その課題の解 決方法が明確かつ妥当か。

今後あなたが展開する予定の事業が価格面や性能面で、競合他社に比べてどういう優位性をもち、どんな風に稼ぎが上がりやすいのかを論理的に説明することが求められています。そして、今回行う事業を実現化するための方法論とスケジュールを具体的に伝えることが必要です。実現可能なやり方ですすめていくのかということが聞かれています。それは、物理的にも、時間的にもです。

さらに、今回すすめる予定の事業については、冷静に分析しており、課題を明確にできていることも必要です。もちろん、課題が明確化されているので、そのための解決策も提示しておくことが重要です。

4 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されるこ等により、効果的な取組となっているか。

ここでも、現実的な側面をきかれています。具体的には、今回採択された場合に税金を元手としたお金が投入されることになりますが、そのパフォーマンスが良いのか?ということが聞かれています。言い換えると、費用対効果はきちんと検証されているのかということと、それが効率的なものなんだろうかというポイントです。

そして、事業再構築であり、業態転換と業種転換を求めている部分があるのですが、その転換ビジネスは適当にきめるのではなくて、既存事業とのシナジー効果を考えているのかどうか?というポイントを突いてきています。現在のあなたのビジネスでの人材、技術・ノウハウを活用していくことで、新に展開しようとしている事業を効果的にすすめることが可能ですか?(=可能である)ということきちんと記載することが重要です。

(3)再構築点

ここでは、まさに「事業再構築」の「再構築」についての審査される項目がピックアップされています。

1 事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。

ここは、そもそそものこの事業再構築補助金の前提としてある、事業再構築指針にきちんと合致しているのかどうかというポイントを突いてきています。事業再構築の枠組み、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編の5つのパターンにあてはまっているのかということです。このどの要件に当てはまっているかどうかをきちんと確認してから、申請書の作成にとりかからないといけません。

2 既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。

事業再構築補助金はウィズコロナ、アフターコロナの社会において、新たに大胆な事業の再構築をおこなう企業にたいして、そのサポートをするものです。したがって、前提として、新型コロナウイルスの影響をうけて、売上の減少があることが必要です。そして、その結果、経営に著しい悪影響が及んでおり、変化をしてないかないと後が無いという状況を冷静に説明する必要があります。

3 市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの 最適化を図る取組であるか。

すでに、「事業化点」のカテゴリでもでてきていましたが、マーケットの分析と自社の分析についてです。それについて、再度聞かれています。ただ、まったく同じことを聞いているわけではなくて、あなたの市場分析、マーケット分析と自社の分析から、違う切り口での説明を求められています。

ここで求められている切り口は、いまの会社資源を活かして新しいビジネスがどう成長していくことを考えているのかを明示することです。


4 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か。

ここにはいくつかポイントが含まれています。いわゆる、「DX」的な視点です。デジタルトランスフォーメーションという視点から、あなたの新事業は地域に対してどんな影響をおよぼして取組をするのかというポイント。また、まったく新しいビジネスモデル構築を通じて、地域に対してどんな良い影響を及ぼしていくのかというポイント。になります。

補助金の元は税金ですから、その活用によって社会に対してどういう良い影響を及ぼしていけるのかということを説明しないといけません。

(4)政策点

政策といっても、小難しいことが求められているわけではないといえます。どちらかというと、あなたの考えているビジネスによる、より広範囲な社会的なインパクトについてや、もっと時間的に長期的な影響についての記載が求められていると考えられます。

1 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。

ここでは、まさにトレンドなトピックを問われています。デジタル技術の活用=DX的な視点を求められています。経済産業省の施策を眺めていくとわかりますが、社会のあらゆる側面をデジタルを起点に再構築していき、効率化と効果性を高める方向を模索しています。この補助金も当然その視点から、日本経済にどういう影響を及ぼしうるかを問われています。

また、もう一つの最近の柱ともいえる、低炭素や脱炭素という視点です。これは、世界的なトレンドでもあり、大企業はこの視点を抜きにして、会社の将来を語ってはいけない雰囲気もあります。首相が二酸化炭素削減目標をアグレッシブに設定したこともあり、補助金を活用した結果どれだけその二酸化炭素削減目標に寄与するのかを知りたいはずです。そこで、我々中小企業にも、その視点を求めてきています。

もちろん、これだけではありませんが「経済社会にとって特に重要な技術の活用等」ということで、それ以外は明示はされていません。これ以外にも、政府が力をいれている技術的な経営への活用テーマがあれば、それを軸に計画を考えてもありでしょう。

我が国の経済社会への影響を語る必要があるので、かなり大所高所ですが、基本的にはファクトベースで記載しますが、すごし大きな夢や希望も含めて記載できるとよりよいかもしれません。


2 新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。

ここでもやはり、新型コロナウィルスによる影響を問われます。ここで書くのは、その影響をクリアして、「V字回復」を達成するために有効な投資なのか、というポイントです。正直なところかなり難しい説明を求められているように思います。「V字回復」が前提ですから、、、。この補助金の政策担当者は、既存のビジネスの売上が地に落ちたくらいのすごい急激に縮小してしまった事業者を前提に考えているからでしょう。

外部環境の意図せざる変化によって、経営状態がドツボにはまっている事業者が、V字回復可能なマーケットにおいて、それを実現できるビジネスモデルを描いていることを主張せよ、ということです。ここまで、何度も、「進出予定のマーケットについて」と、「新規のビジネス」についての分析を求めているのは、背景にこの「V字回復」が本当に可能なのかどうかということをきちんと考えさせる意図があるといえます。

逆を返せば、「V字回復」が望めないようなプランは、今回は求められていないことになります。


3 ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。

これもまたキーワードがちりばめられている審査項目に見えます。

・ニッチ分野、適切なマーケティング、独自性、厳格な品質管理、グローバル市場でトップの地位、、、

そもそも中小企業がやるビジネスですから、いきなりマスマーケットに突っ込んでいくことは想定されていません。やはり、ニッチ分野でいくのが前提です。その上で、マーケティング面、製品やサービスの独自性、品質管理で差別化できているかどうかが問われます。この審査項目を見る限り、マーケティング、製品開発、品質管理等に触れて説明をしておいた方が良いといえます。

その上で、グローバル市場で戦いうるのかというところまで視座を高くしています。これは、この事業再構築補助金に応募する事業者がみんな記述できるとは思えないのですが、そこまで目を配ってくれという要請でしょう。


4 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。

これは、補助金ではよく問われる視点です。地域への経済効果、また雇用創出によって、地域経済の成長を促すような活動をできるんですか、ということです。地域経済の貢献度というのは、多くの補助金では要求されるポイントですので、ここはきちんとロジカルに考えておいた方がいいと考えられます。


5 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組む ことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。

一社だけでできない場合には、異業種での連携はどうですか? 

色々な得意分野をもつ企業や大学などと連携をとって新製品開発をしていくケースもありうるといっていますね。

なので、それぞれの事業者は小さい場合でも、いくつか特色のある企業や団体が共同して、ひとつのプロジェクトを実現していくという可能性もありえるわけです。もし、あなたがそんな共同プロジェクトを座組として考えているならば、それも審査項目として評価されることになります。

採点表は読み込む

このコメントには多分に私見もはいっていますが、こんな風に「採点項目・加点項目」は公表されてます。実際の採択もこの基準に基づいて、評価されていきます。

そこで、実際にあなたも補助金に応募する前に、公募要領の審査項目を一言一句詠み込んでみることをお勧めします。これをやることで、今回の補助金ではどんなことが求められているのかの輪郭がかなりはっきり見えてきます。

色々な専門家がいっている解説を聞いたり、見たりするのも参考になりますが、まずは第一義的に大元にあたってみるのがいいと考えます。なんといっても、採点項目がでているわけですから、この採点項目に当てはまるように計画を考えていくことが重要になります。

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