事業再構築補助金の事業計画書
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あらゆる補助金では公募要領に指示された内容を網羅するように申請書を作成する必要があります。申請書のボリュームや難度は、正直な所、補助金の内容によってそれぞれです。ざっくり考えると、金額が大きければ大きいほど些細な計画を求められる傾向にはありそうです。
では、事業再構築補助金の申請書はどんな具合なのでしょうか?
事業再構築補助金の提出書類とは?
まず、事業再構築補助金における提出書類を確認してみましょう。
- 事業計画書
文字通り事業計画書です。
- 認定経営革新等支援機関・金融機関 による確認書
要件になっている認定支援機関と一緒に作ったということの確認のための書類に成ります。一方、金融機関による確認書は、補助金額 3,000 万円を超える事業の場合に必要な書類です。事前につなぎ資金等で協力してもらう予定の金融機関に補助金に関する事業計画を確認してもらう必要がでてくるため、事前の調整と応募締切について注意が必要になります。ギリギリになると、この書類が間に合わない可能性がでてきます。
そもそも論として、補助金は使った後にその報告をして内容の精査を受けた後に入るお金です。したがって、計画した事業を遂行するためには、自力での資金調達の必要がでてきます。「自力」というのは、現実的には、自分で持っている資金と金融機関から借入(つなぎ融資)をするという意味合いです。これができないと、計画を遂行するために必要なお金が足りないことになります。
もし資金が足りないということになると、事前に計画した内容を実行することは不可能になります。もし4,000万円の補助金申請の場合、2/3補助率だとすると、6,000万円程度の規模の投資が必要な事業をやることになります。補助金の対象が中小企業(一部中堅企業)であることを考えると、それなりに大きな投資金額になります。そこで、今回は3,000万円を超える補助金額を申請する場合には、銀行の協力やフォローが得られることを事前に確認してもらうことが必要になっています。
なにはともあれ、金融機関との事前調整と確認書入手が必須なので、スケジュールに余裕をもった申請書作成を行うようにしてください。
- コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
これは、申請の要件となるところを満たすかどうかについての書類です。主に確定申告の提出済み書類等を合わせて出す必要があるので、ギリギリに焦って準備する必要がないように書類を収集するようにしてください。
- 決算書等
原則的には、決算書ですので、申告書を提出してあれば完成しているものを提出することになります。なんらかの理由で決算書がだせないケースにも対応する処置はありますので、そのケースでは公募要領をきちんと確認してから準備してください。
- 経済産業省ミラサポ plus「電子申請 サポート」により作成した事業財務情報
これは財務情報を一定のツールに放り込んだ結果を提出してくれという要請です。
「中小企業向け補助金・総合支援サイト ミラサポplus:の会員登録が必要です。GビズIDプライムアカウント又は暫定プライムアカウ ントでログインし、「電子申請サポート」の「事業財務情報」を入力することになります。その入力・保存後の、「事業財務情報」画面をブラウザの 印刷機能でPDF出力して提出することになります。
これは、ローカルベンチマーク(通称ロカベン)と言われるものです。
ローカルベンチマークは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール(道具)として、企業の経営者等や金融機関・支援機関等が、企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として活用されることが期待されるものです。
具体的には、「参考ツール」を活用して、「財務情報」(6つの指標※1)と「非財務情報」(4つの視点※2)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握することで経営状態の変化に早めに気付き、早期の対話や支援につなげていくものです。(※1)6つの指標;①売上高増加率(売上持続性)、②営業利益率(収益性)、③労働生産性(生産性)、④EBITDA有利子負債倍率(健全性)、⑤営業運転資本回転期間(効率性)、⑥自己資本比率(安全性)
(※2)4つの視点;①経営者への着目、②関係者への着目、③事業への着目、④内部管理体制への着目
これを参考情報として添付してくれということになっています。
入力が必要なのは、現金及び預金・受取手形・売掛金・棚卸資産・支払手形・買掛金・負債合計・借入金合計・資本金・純資産合計・売上高・前期売上高・売上原価内減価償却費・販管費内減価償却費・減価償却費合計・営業利益・決算年月日・期末従業員数・期末正社員数になります。
海外事業の準備状況を示す書類 (卒業枠、グローバル V 字回復枠の み)
労働者名簿 (緊急事態宣言特別枠のみ)
令和3年の国による緊急事態宣言に 伴う飲食店の時短営業や不要不急の 外出・移動の自粛等による影響を受 けたことにより、2021 年1月~6 月 のいずれかの月の売上高が対前年 (又は対前々年)同月比で 30%以上減 少していることを証明する書類 (緊急事態宣言特別枠【必須】)
2021 年 1 月~6 月の固定費が同期間に 受給した協力金の額を上回ることを 証明する書類 (緊急事態宣言特別枠【任意】)
【加点1】 令和3年の国による緊急事態宣言に 伴う飲食店の時短営業や不要不急の 外出・移動の自粛等による影響を受 けたことにより、2021 年 1 月~6 月の いずれかの月の売上高が対前年(又 は対前々年)同月比で 30%以上減少し ていることを証明する書類
【加点2】
2021 年 1 月~6 月の固定費が同期間に 受給した協力金の額を上回ることを 証明する書類【加点3】
経済産業省が行う EBPM の取組に対す る協力
これらは、当てはまる場合に必要になる書類です。詳細は公募要領をよく確認してください。
このような必要書類の中、おそらくもっとも準備に時間をとられるのが、事業計画書になります。
事業再構築補助金の事業計画書とは?
補助金によっては、「こういうひな形で書いてください」というものを提示してくれているものもあります。しかし、事業再構築補助金ではとくに定型の雛型がありません。
とはいっても何にも無いわけではありません。
公募要領に10.事業計画作成における注意事項 という項目があり、そこに提出して欲しい事業計画書の概要があります。
A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)での作成にご協力ください
ということで、分量の目安があります。今回の審査項目を見る限り少なくなってしまうことはあまりないように思います。むしろ、際限なく多くなってしまうケースを考慮して、15ページ以内という基準をだしているように思えます。
申請する事業再構築の類型について、事業再構築指針との関連性を説明してください。
さらっと、書いてありますが、事業再構築指針との関連性についてきちんと説明をしておかないといけないです。どの類型でやる内容ですよ、ということの表明と説明が必要です。
1:補助事業の具体的取組内容
1 現在の事業の状況、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)、今回の補助事業で実 施する新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組について具体的に記載してください。
事業実施期間内に投資する建物の建設・改修等の予定、機械装置等の型番、取得時期や技術の導入や専門家の助言、研修等の時期についても、可能な限り詳細なスケジュールを記載 してください。
※必要に応じて、図表や写真等を用いて、具体的に記載してください。
こんかいの補助金申請を活用して行う事業の詳細を記載します。
「強み・弱み、機会・脅威」とあるのは、いわゆるSWOT分析をしてください、ということです。そもそも論として、事業再構築の必要性も記載が求められているので、分析を元にロジカルに記載する必要があるでしょう。その上で、具体的な取組内について、導入する設備や工事なども含めて具体的に記載することになります。
この補助金をもとに投資を行う、設備や機械装置については、その内容を具体的に記載し、また専門家の指導や研修等を受ける必要性がある場合にはそのスケジュールも記載します。
したがって、相当詳しくここでは事業計画の内容を記載することになります。さらに最後のところ「※必要に応じて、図表や写真等を用いて、具体的に記載してください。」の部分も見逃せない指示です。この事業計画書を審査する人は、一定の見識をもった専門家です。それは間違いないのですが、あなたのビジネスについて詳しいかどうかはわかりません。むしろ、あなたのビジネスや業界については、さほど知識がないということを前提にしておいた方が無難です。したがって、初めてあなたがやろうしている業界についての計画書をみる人が読んでも理解しやすいように、構成等を考える必要がでてきます。
そのためには、図解や写真などを駆使して、できる限り短時間で読み手の頭の中にイメージを掴みやすいように工夫をすることが大切になります。審査官はおそらくタイトな時間の中で、事業計画書の審査をしているはずですから、すぐに腹落ちできるような書き方、構成を心がけておくことです。
2 応募申請する枠(通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠、緊急事態宣言特別枠)と事業再構築の種類(「事業再編型」、「業態転換型」、「新分野展開型」、「事業転換型」、 「業種転換型」)に応じて、「事業再構築指針」に沿った事業計画を作成してください。ど の種類の事業再構築の類型に応募するか、どの種類の再構築なのかについて、事業再構築指針とその手引きを確認して記載してください。
これは、まさに事業再構築の指針に照らし合わせて、どこの枠で応募するのかについて記載します。
③ 補助事業を行うことによって、どのように他者、既存事業と差別化し競争力強化が実現するかについて、その方法や仕組み、実施体制など、具体的に記載してください。
補助金によって行う事業によって、どういう風に差別化が図られるのかをビジネスモデルから説明することになります。その上で、それをどういう人員構成で実行していくのかのアクションプラン的なものが要求されています。
これは結構重要な点です。というのも、採択されてお金の目途がたったとしても、結局実行部隊がいない限り事業計画は絵に描いた餅になります。誰が実際にやるのかというところまで計画が作れていない場合には、実効性に乏しいということになります。
いくらいいアイデアや企画ができたとしても、それを実行する人を割り当てることができるかどうかが計画の信憑性を担保します。
④ 既存事業の縮小又は廃止、省人化により、従業員の解雇を伴う場合には、再就職支援の計画等の従業員への適切な配慮の取組について具体的に記載してください。
これはまさに「事業再構築」ならではですが、既存事業を停止して新しいビジネスを始めるということが想定されるケースについての記載です。既存ビジネスをダウンサイズする結果、そこにいた従業員をどうするのかということまで配慮しなさいということです。
新しいビジネスに配置転換できればいいのですが、業態転換とかガラッとまったく別分野に突っ込む場合には、そうもいきません。そうなると、解雇の可能性もありえます。その際の取組についてもきちんと計画しておくことが必要になります。
2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
① 本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法などを記載してください。
これからどういうマーケットに進出していって、どういうユーザーと付き合っていくのについての詳細を記載します。あなたが新マーケットまた新ユーザーに対して、何をいくらでどういう風に売っていくことができるのかという話です。
また、新しい取組でいきなり完璧を期することは不可能です。いくつか課題はもったまま先に進むことになるはずです。ただし、その課題は課題のままにしておくことはありません。きちんと対策を考えて、クリアしていくことが要求されます。
そこで、スタート時点で考えられる課題を洗い出しておき、その対応策を計画策定時点において準備しておくことが必要です。
② 本事業の成果の事業化見込みについて、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について簡潔に記載してください。
新しいビジネスをスタートしていくわけですから、いきなり一気に事業が花開くことは少ないでしょう。段階的にある程度の時間を経てから、それなりに納得できる規模になっていくはずです。そのためには、時間的な計画をたてておくことが必要です。今回スタートするビジネスをどういう風に規模を拡大していくのか、というところの目論見を記載します。
③ 必要に応じて図表や写真等を用い、具体的に記載してください。
これは、すでに一回でてきましたが、読み手はあなたのビジネスについてはあまり知見がないことを前提にわかりやすく理解できることを工夫してください。
3:本事業で取得する主な資産
① 本事業により取得する主な資産(単価50万円以上の建物、機械装置・システム等)の名称、分類、取得予定価格等を記載してください。(補助事業実施期間中に、別途、取得財産管理台帳を整備していただきます。)
この補助金をからめて取得する予定の資産の明細をつけることになります。
4:収益計画
① 本事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画等について具体的に記載してください。
すでにでてきたことのまとめ的な感じもあります。
どういう人員配置で計画をすすめるのか、時間的な予定はどう考えているのかを記載します。また、事業再構築補助金の場合には、中小企業にとって比較的大きな投資額になるケースが多いはずです。そこで、そのための資金調達をどう行う予定なのかを具体的に書きます。
② 収益計画(表)における「付加価値額」の算出については、算出根拠を記載してください。
この補助金事業は、新に取り組む事業の付加価値額を増加させることが目的です。このために、補助金をつけてくれるわけです。したがって、付加価値額をどうはじき出しているのかを伝えておく必要があります。
枠ごとに少しずつ要求される付加価値額は違います。通常枠ではいかの通りです。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
となっています。これを、付加価値額要件といいます。
付加価値額については次の記載が公募要領にあります。
(4)【付加価値額要件】について
応募申請にあたり、以下の点に留意してください。
ア.付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
イ.成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する(申請者における)決算年度の付加価値額とします。
ウ.卒業枠については、事業計画期間終了時点において、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく「2.補助対象事業者」に定める中小企業者等の定義から外れ、中堅・大企業等に成長することができなかった場合、通常枠の補助上限額との差額分について補助金を返還する必要があります。
エ.卒業枠については、一時的に中堅・大企業等へ成長した後、正当な理由なく中小企業者の要件に該当する事業規模の縮小をさせた場合、本補助事業終了から5年間は中小企業庁が行う中小企業者等向けの施策(補助金、委託費等)をご利用いただけません。
オ.グローバルV字回復枠については、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく、事業計画期間終了時点において、付加価値額の年率平均の増加又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均の増加が5.0%に達しなかった場合、通常枠の補助上限額との差額分について補助金を返還する必要があります。
この定義にしたがって、付加価値を算出し、それが要件を満たす計画になっていることが要請されています。
③ 収益計画(表)で示された数値は、補助事業終了後も、毎年度の事業化状況等報告等において伸び率の達成状況の確認を行います。
毎年度、毎年度、実績報告をして達成状況を確認しますよ、ということです。適当すぎる数値計画をつくると結構大変なことになります。
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