事業再構築補助金の公募要領の読み方
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事業再構築補助金に限らず、ありとあらゆる補助金の採択にかかせないのが、公募要領の内容をきちんと把握することです。分からなくなったら公募要領に立ち返って確認することになります。それでもわからない場合には、「よくある質問集」がまとめられていることがあるのでそれも確認してみてください。それでも、解釈がわかれそうだったり、よくわからない場合には、事務局に電話することになります。
もっともいきなり電話して聞いてしまうのもありだとは思いますが、適切な答えを得るためには適切な質問をすることが重要になります。そのためには、該当する補助金に関する資料は一通り目を通した上で、事務局に質問した方が望んでいる答えが返ってくる確率は高くなるはずです。そのため、わたしはまず公募要領や「よくある質問」には一通り目を通しておくのをおすすめします。
さらに現実的な問題として、事務局の電話がなかなかつながらないことも多いといえます。特に、公募直後や締切直前なんかはヒドイ状況だと考えられます。そこで、まず自分のペースで公募要領とそのまわりの資料を読み込んでおくことが先決だと考えています。誤解をしないでいただきたいのですが、電話するなということではありません。やはり、わからないことは電話することが必要だと思います。
公募要領の読み方
では、公募要領はどういう風に見ていくのがいいでしょうか?
補助金の公募要領を読むということは、すなわち、その「補助金に採択される」という目的があるはずです。そうすると、その「採択される」という目的をできる限り効率的に達成するために、どうしたらいいのか?ということになります。
そこで、公募要領をどう読んでいけばいいのかということを考えて見たいと思います。
まず、補助金でもっとも重要なのは、それぞれの補助金が設定された背景です。それについて、公募要領には
本事業は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態 転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構 築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。
また、事業再構築を通じて事業規模を拡大し、中小企業者等から中堅・大企業等に成長するこ とや、中堅企業等が海外展開を強化し市場の新規開拓を行うことで高い成長率を実現することは 特に重要であることから、本事業ではこれらを志向する企業をより一層強力に支援します。
とあります。
ここを外さないことが採択のためには重要です。この後に、細かいポイントはありますが、あなたの検討する事業計画が、この事業再構築補助金の概要に沿っているのかどうかは、折をみて確認してください。ともすると、何か自分の都合のいい方向に解釈をかえてしまうケースがあります。しかし、事業再構築補助金で、採択したいビジネスはこの目的に沿っているものです。
その上で、具体的なところを考えることになります。
そもそも業種や数値的条件にあてはまるのか?という視点
具体的な、計画を作成するために、そこそこ労力がかかります。そのため、ある程度申請書を作成しはじめてから、「そもそも、うちのビジネス要件にあてはまらないではないか!」ということになると悲劇です。
そこで、具体的に申請書の作成フェーズにうつるまえに、要件への当てはめをきちんとやっておくことが重要になります。そこで、要件について記載されている公募要領の該当箇所を読んで、当てはめをやります。事業再構築補助金では次の3つが重要な要件になります。
1 売上が減っている
2 新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組む
3 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
というポイントです。これらを満たすことができるならば、まずは申請書・事業計画の策定にうつることができます。
どういうところを採択のために採点されるのか?という視点
補助金を活用して、新にはじめるビジネスは当然儲かる見込がないといけないことは当たり前です。まったく儲かる見込がないけど補助金でやらせてください、というのは通りません。
直感的でもいいので、その新規事業は儲かるとして、事業再構築補助金ではどんなところが問われていくのか?という大枠を詳細の検討に入る前に頭の片隅においておく方が、効率的です。そこで、補助金申請のために非常に役に立つのが、公募要領の「審査項目・加点項目」のページです。事業再構築補助金においても、これは目次に項目をたてて記載されています。
あなたが作成し、提出する申請書は、専門の審査員が審査をします。その際には、審査員のなんとなくな感覚ではなくて、評価ポイントがあらかじめ決められており、それに基づいて評価されていきます。
「審査項目・加点項目」には、その評価基準となるポイントがまとめられています。つまり、補助金に採択されたいならば、この「審査項目・加点項目」を満たすように申請書を埋めていく必要があります。
「それ、頭の中ではかんがえてたよ!」「申請書には書ききれなかったから、省いちゃったよ!」「それだったら取り組もうとおもえばやれたのに!」というのは通用しません。「審査項目・加点項目」に当てはまる取組をやるならば(やれるならば)、可視化して文書上に説明をしておかないといけません。審査員は書いていないことまで、想像して評価してくれるほど暇ではありません。一定の時間内にそれなりの量の申請書を評価するわけですから、あくまで申請書上に書いて有ることだけが評価対象になります。
「審査項目・加点項目」には、採択のためのヒントがいっぱいつまっているわけですから、事前にそれを把握した上で、あなたのビジネスの詳細をつめていくことが重要です。誤解をおそれずにいうと、あなたがやろうとしていることを、きちんと「審査項目」に合致しているように記載する意識も必要です。
公募要領の「注意事項」を何度か確認する
続いて、なるべく最初の段階で一度確認しておいていただきたいポイントがあります。
それは「注意事項」です。あえて公募要領に「注意事項」というサブタイトルなどをたてて記載しているということは、質問が多いポイント、ミスることが多いポイント、見落とすことが多いポイント、などなど「あるあるダメポイント」が集約されています。
申請書作成フェーズの早い段階で一度目を通しておき、最後に仕上げの前に再度確認するくらいのことが必要です。
では、ミニテクニックですが、どうやって確認するかというと、ダウンロードした公募要領のPDF内を検索してみてください。「注意事項」というキーワードで検索してみます。
事業再構築補助金では「電子申請にあたっての注意事項」、公募要領の要約箇所に「注意事項」、「事業計画作成における注意事項」の3つがひっかかってきます。
電子申請にあたっての注意事項
ここはシンプルなのですが、「GビズIDプライムアカウント」を早い段階に取得しておいてください、という要請です。というのも、事業再構築補助金の申請は、すべてこの「GビズIDプライムアカウント」を使っておこなうため、申請直前になってあたふたしないために注意を促しています。
本当に申請の手続方法段階のことにすぎませんが、せっかくいい申請書をつくっても提出できなければ、採択されることはありません。しかも、決められた締切までに提出する必要があります。そのためには、「GビズIDプライムアカウント」を使ってやってくれ、ということが書いてあります。
この「GビズIDプライムアカウント」は申請してから取得までに少し時間がかかるので、まず取得をしてください、という注意事項が書いてあります。しかも表紙をめくってすぐに書いてありますので、「すぐやれ」ということです。
公募要領の要約箇所の「注意事項」
ここは結構シビアなことも書いてあるのでしっかり見ておくことが重要です。
〇本事業は、中小企業等の事業再構築への挑戦を後押しし、新たに取り組む事業の付加価値額を高めることを支援するものであり、申請者は事業計画の作成、実行及び成果目標の達成に責任を 持って取り組んでいただく必要があります。
この注意事項の欄では、まずこの文章が太字かつ下線ありで記載してあります。一言で言うと、目的をきちんと分かった上で採択されたら、その計画をしっかり実行してくださいね、ということなんです。当たり前なのですが、あえて書いてあります。いろいろ解釈はできますが、結構大きな予算をとってやっているんだから、採択されたら腰を据えてやってください、という念押しでしょうか。
○ 本事業では、提出いただいた事業計画を外部有識者からなる審査委員会が評価し、より優れ た事業計画を採択します。中小企業者等の卒業枠や中堅企業等のグローバルV字回復枠では特 に優れた内容を求めます。申請前に、書類に不備や不足がないことを必ずご確認ください。不備がある場合(例えば、中堅企業等であるにも関わらず、通常枠に補助率3分の2の事業計画 を提出等)は、審査できないことがあります 。採択発表後、審査委員会による個別の評価結果 の詳細はお答えいたしかねますので、ご了承ください。
これも当たり前ですが、公募要領にかかれた内容をしっかり確認して過不足無く提出書類を準備して出してください、という要請です。期限までに必要書類を全部出してください、ということです。あえて書いてあるということは、間違える申請者がかなりいるということなんだろうということです。お気をつけください。
○ 本事業は、今後、さらに3回程度の公募を予定しています。複数回の公募を行うことで、申請事業者の予見可能性を高め、十分な準備の上、適切なタイミングで申請・補助事業を実施するこ とができます。
事業再構築補助金は合計で5回やるといわれていますから、この公募要領は2回目のものということであと3回は公募しますという話です。もし今回間に合わなくても、次回ので応募できますよ、っていうことを伝えています。
○ 採択結果は、申請いただいた事業計画に記載のある金額の全額に対して、補助金の交付決定を 保証するものではありません。採択決定後に「補助金交付申請」をしていただき、その経費等の 内容を事務局で補助対象経費として適切なものであるかどうかの精査を行います。必要に応じ て、事業者に照会・連絡等を行った上で、補助金交付額を決定し、通知いたします。
これは事業再構築補助金に限らず、ありとあらゆる「補助金」の構造です。この構造を理解していない方がいるので、クドいのですが記載されています。つまり、補助金は採択されたからといって、お金を受け取れるわけではない、ということを説明しています。採択後には、規程に従った「補助金交付申請」を行い、それが審査されたあとに「補助金交付額」が決定されるという流れです。場合によっては、提出された「補助金交付申請」書類だけでは足りないと判断する場合もあるので、その時には追加資料の提出をお願いするかもしれません、ということです。
○ 事業計画の検討に際して外部の支援を受ける場合には、提供するサービスの内容とかい離した 高額な成功報酬等を請求する悪質な業者等にご注意ください。認定経営革新等支援機関及び申請書の作成を支援した外部支援者がいる場合は、事業計画書の「事業計画書作成支援者名」「作成支援報酬額」の欄に当該事業者名及び当該事業者に支払う報酬の内容(成功報酬の場合は、採択時に支払う金額)と契約期間を記載してください。申請支援の実態に関する調査を実施するとともに、トラブルが起きた場合の通報窓口を設置し、不適切な行為と認められる事案をとりまとめ、公表します。当該支援者が認定経営革新等支援機関である場合には、業務改善命令や認定取 り消しに至る可能性があります。
この点は、ご自分で申請書を作成する場合には関係ありません。しかし、専門家に依頼する場合には確認しておいた方がよいところです。申請書の作成を専門家に依頼すると、当然そのための報酬がかかることになります。報酬の支払い方については、様々ですが、その内容について申請書に記載してくださいということが要請されています。
その上で、あまりにも不適切な場合には、一定の処置が行われるという流れになっています。
不適切な行為の例としては、
・提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬等を申請者に請求する。
・金額や条件が不透明な契約を締結する。中小企業等に対して強引な働きかけを行う。
・申請書に虚偽の内容の記載を教唆する、又は、作成支援者名を記載しないように求める。
が例示されています。
過去、その他の補助金でこれに類する行為があって、事務局に問い合わせなどがあったということなのでしょう。そのため、事務局側でも、作成支援をした支援者とその報酬額を明らかにしておくことを要求しています。これによって、あまりにも度を過ぎた報酬を抑制したという意図があるのではないでしょうか。
とはいっても、これは外部の支援者に依頼しない方がいいということではありません。事業再構築補助金の申請の作成は結構なボリュームがあります。したがって慣れていない方が、本業の傍らに作成するのは相当な負担がかかるはずです。外部の支援者に作成を依頼する場合には、きちんと事前に費用や条件などは確認した上で依頼することが重要だということになります。
中小企業庁の動画説明
非常に興味深いことに、中小企業庁の担当者がこの補助金の制度の背景について解説している動画を作成してくれています。規模が大きい補助金ということもあり、申請者にはきちんと理解してから応募してほしいというコトなんだと思います。こちらも是非参照してください。
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